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「1ヶ月単位の変形労働時間制」における残業時間の計算方法は?

「1ヶ月単位の変形労働時間制」における残業時間の計算方法は?

こんにちは!櫻井です。

多くの医療機関が抱える労働時間に関するお悩み
・(サービス業の側面があるため)労働時間を長く設定しなければいけない
・月末/月初の時期だけレセプト業務が集中してしまい、残業時間が発生する

その解決策のひとつとして、前回の記事では「1ヶ月単位の変形労働時間制」を紹介しました。

今回はその「1ヶ月単位の変形労働時間制」について、

・この制度において残業時間は実際にどのように計算するのか
・よくある勘違い

をお伝えしていきます。

「1ヶ月単位の変形労働時間制」のおさらい

ではまず、「1ヶ月単位の変形労働時間制」のおさらいから。

ざっくり言うと、【1ヶ月の範囲内で、1週平均40時間※に収めれば、日や週の法定労働時間を超えることが可能になる制度】です。

※労働者数10人未満の医院等は「特例措置対象事業場」に該当し、法定労働時間の特例が適用され、変形期間を1ヶ月とした場合の所定労働時間は1週平均44時間まで設定することが可能です。ここでは話をシンプルにするために「40時間」に統一して解説します。

労働基準法では、原則、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えてはいけない、と定められています。

ただ、医療機関の中には、業務の都合上、どうしても法定労働時間を超えて勤務させる必要が出てくる場合があります。

そのような場合に、1か月および1週間あたりの労働時間の上限を超えない範囲で、繁忙期と閑散期を考慮し、労働日ごとの所定労働時間を柔軟に設定することができるのが「1ヶ月単位の変形労働時間制」です。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

「1ヶ月単位の変形労働時間制」における時間外労働の考え方

事前に労働時間を調整できるとはいえ、「1ヶ月単位の変形労働時間制」にも残業代は発生します

どのような場合に発生するかを説明する前に、よく出てくる単語を整理しましょう。

・法定労働時間:
労働基準法で定められた労働時間。原則は1日8時間、1週間40時間。

・所定労働時間:
職場の就業規則で定められた労働時間。
例えば、9:00~17:00勤務(休憩1時間)の場合、所定労働時間は7時間。

・法定内残業:
1日の所定労働時間が8時間未満の場合、その所定労働時間を超えて8時間まで働いた時間。

・法定外残業:
時間外残業とも言う。労働基準法で定められた1日8時間、1週間40時間を超えて働いた時間。
割増賃金の対象となる。

原則的には、1日8時間の法定労働時間を超えた分が時間外労働となります。

しかし、「1ヶ月単位の変形労働時間制」では「1日8時間」という制約がなくなるため、『所定労働時間を10時間に設定している日は、10時間勤務させても法定外残業時間は発生しない(=割増賃金の支払いが不要である)』となります。

計算の実例

実際にどのように計算していくか、実例をみながら確認していきましょう!

「1ヶ月単位の変形労働時間制」では、残業時間を【1】日ごと【2】週ごと【3】月ごとで段階的に計算していきます。

「リーフレットシリーズ労基法32条の2 1か月単位の変形労働時間制」(厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署)

【1】日ごと

(1)所定労働時間が8時間を超えている日
所定労働時間を超えて働いた時間全てが法定外残業時間(図の④)になります。

(2)所定労働時間が8時間以内の日
所定労働時間から8時間までが法定内残業(図の②)、8時間を超えて働いた時間が法定外残業時間(図の①)になります。

【2】週ごと

(1)所定労働時間が40時間を超えている週
所定労働時間を超えて働いた時間が法定外残業時間(図の④)になります。

(2)所定労働時間が40時間以内の週
40時間を超えて働いた時間のみが法定外残業時間(図の③)となります。ただし、「日ごと」の基準で残業となった時間は、カウントの重複を避けるため、週ごとの基準では計算から除外されます。

【3】月ごと

月ごとの法定労働時間を超えて働いた時間が、法定外残業時間(図の⑤)になります。ただし「日ごとの基準」「週ごとの基準」で残業となった時間については、カウントの重複を避けるため、月ごとの基準では計算から除外されます。

ちなみに月ごとの法定労働時間は、各月の暦日数ごとに上限が決められています。上の図では31日までなので、上限は177.1時間です。

「リーフレットシリーズ労基法32条の2 1か月単位の変形労働時間制」(厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署)

このように、なかなか複雑ではありますが…

この3段階の計算を経て、月々の残業時間が確定します。

よくある勘違い

「1ヶ月単位の変形労働時間制」 を活用中もしくは活用予定の経営者の方は確実に増えてはいますが、以下のような勘違いを抱えたまま導入する方もいます。

👤(経営者A)「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入した場合、1か月の上限時間内に収まっていれば1日や1週間についてはいくら働かせても問題ない!

NO!
「月ごと」の基準のみ満たしていれば残業時間が発生しないのではなく、「日ごと」や「週ごと」で見たように、時間外が発生する可能性は十分にあります。
きちんと「日ごと」「週ごと」「月ごと」のそれぞれで労働時間を集計・管理しましょう。

👤(経営者B) 業務や人員の都合で従業員のシフトを自由に変更できる!

NO!
原則、事前に決まっていたシフトを変更することはできません。

「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、労働時間が長くなるであろうタイミングは事前に時間外が発生しないよう調整し、その代わり他の日は労働時間を短くする、という前提の特別ルールです。

『今日は所定労働時間が8時間だったけど、仕事の都合で6時間で帰ってもらうから明日は2時間長く働いてね』といった自由な(勝手な)調整は認められません。

 「1ヶ月単位の変形労働時間制」の採用ルールに則り、シフト表などで労働日および労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定め、そのスケジュールに沿って勤務してもらう必要があります。

まとめ

「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、 導入することで、業務の繁閑に応じて所定労働時間を事前に調整できるようになり、人員配置の面でも非常に大きなメリットをもたらしてくれる制度です。

ただ、所定労働時間や法定労働時間を超えれば当然残業代は発生しますし、勤務時間の設定にも制約があります。

また、導入にあたっては、その採用方法が細かく定められているため、事前に制度をきちんと理解し、本当にご自身の事業所に導入することが効果的かどうかを吟味した上で、運用に進んでいただくことをお勧めしております。

法律を味方につけて、労使共に快適な職場を目指しましょう!

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