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「1ヶ月単位の変形労働時間制」を使えば残業手当が不要になる?

「1ヶ月単位の変形労働時間制」を使えば残業手当が不要になる?

こんな医療機関が一定数ある

こんにちは。櫻井です。

9月に入り、多くの会計・経理系の職種は上期決算に向けて繁忙期に突入する時期ですね。

業界や職種によって繁忙期は様々ですが、なんの備えもなく繁忙期に突入してしまうと、人手が足りない、残業時間が増える、人件費がかさむ、といった悩みが出てくるかと思います。

年間、月間、週間を通して、働き方を平準化・最適化する、というのは経営者にとっても頭の使いどころ。

私が得意とする医療業界でも、
・(サービス業の側面があるため)労働時間を長く設定しなければいけない
・月末/月初の時期だけレセプト業務が集中してしまい、残業時間が発生する
といった悩みをよく聞きます。

そんな医療機関が活用しているのが

労働基準法では、原則、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えてはいけない、と定められています。

そこで、医療機関が陥りがちな労働時間の悩みに対応し、一定の条件を満たせば法定労働時間を超えることが許される制度が「1ヵ月単位の変形労働時間制」です。

「1カ月単位の変形労働時間制」の概要

「1ヵ月単位の変形労働時間制」は、ざっくり言うと、【1ヶ月の範囲内で、1週平均40時間に収めれば、日や週の法定労働時間を超えることが可能になる制度】です。

あらかじめ繁忙期の労働時間を長く、閑散期を短く設定しておいて、月単位で総労働時間を調整しましょう、という考え方。

結果として、繁忙期に勤務時間が増加しても、時間外労働として扱わなくてもよくなります。

では、この「1ヵ月単位の変形労働時間制」は、どのように計算するのでしょうか。

まず、月の暦日数に応じて1ヵ月の法定労働時間の上限が決められています。

「リーフレットシリーズ労基法32条の2 1か月単位の変形労働時間制」(厚生労働省、都道府県労働局、労働基準監督署)

たとえば9月であれば暦日数が30日なので、週の法定労働時間が40時間の場合、1か月の上限時間は171.4時間となります。(労働者数10人未満の医療機関は「特例措置対象事業場」に該当し、法定労働時間の特例が適用され、週44時間まで設定することが可能となります)

1か月の上限時間と、1週間あたりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えない範囲で、繁忙期と閑散期を考慮し、労働日ごとの所定労働時間(*)を柔軟に設定することができます。

ただし、労働時間の調整が可能とはいえ、「1ヵ月単位の変形労働時間制」にも残業時間が発生する点は注意です。この点については、少し計算が難しいので後日別の記事で取り扱いたいと思います。

(*)法定労働時間と所定労働時間の違いとは?
・法定労働時間:労働基準法で定められた労働時間。原則は1日8時間、1週間40時間。
・所定労働時間:就業規則等で事業所ごとに定められた労働時間。例えば、9:00~17:00勤務(休憩1時間)の場合、所定労働時間は7時間。

「1ヵ月単位の変形労働時間制」の効果

「1ヵ月単位の変形労働時間制」を導入することで、経営側、従業員側で以下のような効果が考えられます。

■経営側

・本来であれば残業時間に該当していた時間が所定の労働時間となり、残業手当を支払う必要性が無くなる。
→たとえば、所定労働時間を1日10時間に設定することも可能となります。

■従業員側

・事前に労働時間を見通せるようになるため、働くときは集中して働き、休むときはしっかり休む、とメリハリをつけて時間を使うことができる。

ワークライフバランス、QOLという言葉が一般的になってきた現代においては、活用方法次第では、経営者側、従業員側、双方にメリットがある制度となります。

ただし、残業時間が発生しその計算方法が複雑であること、導入には就業規則等の整備や届け出が必要であること、といった注意点もあり、管理者の業務煩雑化が懸念されることはきちんと理解した上で導入するようにしてください。

まとめ

医療機関では、診療科や経営者の戦略、開業エリアによって、診療時間の設定も様々です。それに伴い、スタッフの労働時間もフレキシブルな対応が求められるようになりました。

時期によって繫閑の差がある、1日の労働時間を長く設定したい、等の意向がある場合は「1カ月単位の変形労働時間制」も検討してみてはいかがでしょうか。

制度はやや複雑ですが、経営者側、従業員側双方にメリットになり得ます。

ちなみに、「うちは、1カ月単位の変形労働時間制でいきます!」と従業員に対して宣言すれば適用されるわけではなく、導入に際してはルールが細かく決められているため、事前にきちんと勉強する、もしくは専門家に相談するなどして、正しく運用するようにしましょう!

気になるけど難しくて躊躇している、という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

細かな制度を味方につけて、経営者にとっても従業員にとっても、最適な働き方を目指していければ何よりです。

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