いよいよ年末調整も佳境に入り、忙しくしている人事担当者も多いでしょう。(当事務所もてんてこ舞いです!)
年末調整を通してお客様からよく受ける質問が、「給与所得と給与収入って一緒じゃないの?何か違うの?」というものです。
確かに私自身も、この仕事に就く前はよく理解していなかったように思います。
そこで今回は、給与所得と給与収入の違いや、給与所得控除について解説していきます。
「収入」「所得」「手取り」…それぞれの定義は?
給与に関係してよく出てくる言葉として、「収入」「所得」「手取り」「年収」といったものが挙げられます。
まずはそれぞれの言葉の定義を整理しましょう。
「給与」とは
給与は、会社から従業員に対して支払われる労働の対価のことです。
これがいわゆる「給与収入」ですね。基本給だけでなく、各種手当、賞与も含まれます。
また、現金の支給以外にも自社製品などの現物支給も給与とみなされます。
ちなみに、たまに会話の中で出てくる「額面(給与)」という言葉も、各種控除がされる前の金額を指すため、この「給与」と同義といえます。
「所得」とは
所得は、収入から経費を引いたものです。
会社員の方だと、年間の給与収入から「給与所得控除」を引いた(控除した)金額が「給与所得」になります。
※給与所得控除については、後で説明します!
「手取り」とは
手取りは、指定した口座に振り込まれる、実際に受け取る金額のことです。
給与所得と似ていますが、所得税や住民税、社会保険料などが差し引かれている点が異なります。
「年収」とは
年収は、毎月の給与・各種手当・賞与等を含め、1年間に会社から支払われた総額のことです。
税金や社会保険料が差し引かれる前の金額であり、上記「給与」の年間総額のことをいいます。
したがって、例えば年収1,000万円あったとしても、実際に使える金額(手取り)は700万円~800万円程度であることが多いです。
給与所得と給与収入の違い
混同されがちな給与所得と給与収入ですが、前述のとおり、両者の違いは給与所得控除が反映されているかどうかです。
つまり、
ということですね。
では、たびたび出てくる「給与所得控除」とは一体なんなのでしょうか?
給与所得控除とは
所得税は【課税所得×税率】によって計算されます。
当然ですが、課税所得が小さい方が所得税は低く、課税所得が大きい方が所得税は高くなります。
(税率についての細かい説明はしませんが、所得税は「累進課税制度」を採用しているため、課税所得が大きければ大きいほど、より高い税率が課せられます。)
自営業などの事業所得者は、仕入れ費・交際費・被服費・雑費などの金額を必要経費として差し引くことで、課税所得を小さくすることができます。
「経営者は買ったものを経費にできていいな~」なんて話を聞くこともあるかもしれませんが、そう言われる理由はここにあります。
ただ実は、あまり知られていませんが、従業員の方々にも必要経費が認められており、それが「給与所得控除」という名称で採用されているのです。
仕事をする上で必要な、仕事用の服、靴、筆記用具代などの購入に使用するという前提のもと、一定の額が「給与所得控除」として給与収入から控除されているのです。
給与所得控除の額は1年間の給与収入に応じて決まり、差し引かれた金額は所得税の課税対象外となります。
令和2年以降の給与所得控除額は以下の通りです。
国税庁のHPでは、自分の年収から給与所得控除の大まかな金額を自動計算できます。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
源泉徴収票とは
人事担当者や我々社労士が年末に追われる「年末調整」は、所得税の過不足を調整するためのものです。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください!)
この所得税の計算の過程で、「給与所得控除」が登場します。
従業員の方が受けられる控除には、「給与所得控除」以外にも「基礎控除」というものがあり、基礎控除は、所得2,400万以下の人は一律48万円、所得2,400万を超えた人はその所得に応じた金額が適用されます。
給与収入からこれらの控除額を差し引いた金額をもとに所得税が計算され、年収と合わせて年間の所得税額が確定します。
年末調整が終わると給与明細書と一緒に源泉徴収票が発行されますが、これは前述の計算を経て明らかになった「あなたの1年間の総決算書」のようなものです。
「支払金額」の項目に年収が、「給与所得控除後の金額」の項目に給与所得が記載されます。そして、「源泉徴収税額」の項目が、各種控除を反映して計算された納めるべき所得税の金額です。
毎年受け取るけど、何が書いてあるかあまり気にしていなかった…
という方は、ぜひ今年からは数字の意味を意識しながら眺めてみてはいかがでしょうか!
正しい知識を手に入れよう
給与所得と給与収入の違いや、年末調整、源泉徴収票といった単語との関係について解説してきました。
給与計算はさまざまな控除、税制の上に成り立っており、経営者や人事担当社の方は日々いろいろな知識と格闘しながら業務を進めています。
年末まであと少し、無事乗り切って爽やかに新年を迎えたいですね。
また、自分の年収が確定したこのタイミングで、年末年始に自分のお財布事情を見直して来年の資金計画や目標を立てる、という方も多いと思います。
「家賃は給料の3割までにしよう!」
「毎月給料の10%は貯金しよう!」
「車を買うなら年収の5割ほどにしよう!」
などのフレーズが巷で飛び交っていますが、それぞれどの額を基準にするかで大幅に金額が変わってくるので要注意です。
正しい知識を手にして、お金を管理下において、来年も良い年にしていきましょう(^^)