こちらの演奏を聴いてみてください。
音程も良く、表現力豊かで、素晴らしい演奏です。
なんと、この演奏をしているのは、相対性理論で有名なアルバート・アインシュタインなのです。
アインシュタインは、ノーベル物理学賞を受賞するほどの物理学の専門家でありつつ、ヴァイオリニストでもあったのです。
このような偉人を紹介してから自分の話をするのは気が引けますが、
私も幼いころから音楽に触れあってきており、そこで得た経験が仕事に生きているなと思うことがあります。
そこで今回は、音楽経験が仕事に与えた影響について書きます。
わたし自身6歳でヴァイオリンをはじめ、色々ありましたが20年以上続けてきました。
楽器を演奏するとき、
合奏の場合には「なんか違う…」「思っているようなハーモニーにならない…」という悩みを抱きます。
一方、独奏の場合には「うまく弾けない…」「良い音が出ない…」といった悩みを抱きます。
うまくいかないときに、「習うより慣れろ!」の精神で
同じ箇所を同じように何度弾いても一向に改善しません。
むしろ変な癖がつき事態が悪化することもあります。
こんなときにいつも言われてきたのが【部分練習】という言葉でした。
(当時は漢字もわからなかったので「ブブンレンシュウ」というひとつの言葉だと思っていました。
分かりやすくするために、例を挙げます。
上に挙げたような悩みを抱えた場合以下の例のように問題を細分化することができます。
合奏の場合)
・2ndヴァイオリンパートとヴィオラパートの音量バランスが悪い
・1stヴァイオリンパートの音程が悪い
・チェロパートの冒頭の弾き始めが他パートより一瞬遅い
・音量のダイナミクスの認識がヴィオラパートとチェロパートでずれている
独奏の場合)
・右手で持つ弓に人差し指でかける圧力が少しだけ軽い
・左手の指使いが本人の筋量にあっていない
・右手で持つ弓と楽器の弦の接触位置が1cmほどずれている
・立ち方が悪く重心が身体の中心にない
・弾き始めの呼吸のタイミングが音楽に合っていない
上記の例はほんの一例であり、一言で「うまくいかない」とはいってもその原因は千差万別です。
そして対策する対象も、
曲全体、各楽章、各フレーズ、各小節、各音と細かくわける必要があります。
このように、うまくいかない原因をこまか~~く細分化し、
その改善に適した練習方法をその都度考えることで上達していきます。
この考え方は自分に対してだけではなく、人に指導するときにも同じです。
どんな人も自分にもできない時代があったにもかかわらず、その時代のことをすっかり忘れがちです。
そして、できない人が目の前にいるときに、「できる自分」という立ち位置から発言をします。
できない人には、「なにができていないのか」「なぜできていないのか」が
ただ単に経験値の差からわかならいだけなのかもしれません。
「できなかった自分」を覚えておくのは難しいかもしれませんが、
できない人を理解し、道しるべを与えることが指導者にとっては大切です。
私自身も音楽をしていなければそういうことを理解できない人間になっていたかもしれません。
子どもや大人を指導する立場になってからは、目の前の人の成長のために、
課題が何かを推測し、その課題に対する練習方法を考えることを繰り返してきました。
ここで「なぜできない?練習しろ!」とだけ言っていたら、
目の前の生徒は成長しないどころか楽器が嫌いになります。
いち演奏者としても、いち指導者としても、この課題を細分化するという過程はとても大切です。
この考え方が、自分が仕事に向き合うときや、ほかの人とプロジェクトを進めるときに
役に立っているな~と感じることは多いです。