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遅刻を繰り返す職員にペナルティとして欠勤控除しても良い?

遅刻を繰り返す職員にペナルティとして欠勤控除しても良い?

一般的に、医療機関の人事労務管理は難しいと言われています。一般企業において人事・総務の経験がある人を「事務長」として雇用しても、なかなか現場に馴染めずに、職員や経営者との対立を招くこともよくあります。

それは、本来対等であるべき労使の力関係が、医療現場においては、労>使となることが理由のひとつです。その原因は主に、雇用する職員を、医療現場の近隣に住む、看護師等の有資格者から選ぶ必要があるためです。この2つの条件を満たす母数自体が少ないために、労働者の希少価値が高まり(→権利意識が高まり)、労使の力関係の逆転が起こります。

そのような特殊性をもつ医療機関において、盤石な組織を築くために必要なことは主に以下の2つです。

①明確なルール/管理体制を定めること
②管理者が基礎的な労務管理知識を有すること

そこで、このブログを通じて、医療機関の管理者の方が現場で実際に発生した問題を解決する助けになるような情報を定期的に配信していきます。人事職員の方も参考になることがあると思いますのでご活用ください。

では早速、今回のテーマに入ります。

【遅刻を繰り返す職員にペナルティとして欠勤控除しても良い?】

どんな理由があれど、始業時間に業務を開始することは会社との約束です。
体調不良等予期せぬ事態が発生した場合は「しょうがない」ともなりますが、
遅刻が何回も続いていると周りからの印象も悪く、チームワークの乱れにも繋がります。

そのような状況を見かねて、
「遅刻を3回したらペナルティとして1日分を欠勤扱いにする」
等のルールを導入するケースが、特に診療所などでよく見られます。

このルール、果たして通用するのでしょうか?
今回は、遅刻を複数回繰り返す職員に対して、ペナルティとして一定時間欠勤扱いとするケースについてまとめたいと思います。

■「 遅刻を3回したらペナルティとして1日分を欠勤扱いにする」は可能か?
結論としては、難しいと思います。
まず、今回の「1日分を欠勤扱いにするペナルティ」ですが、法律上は「減給の制裁」と言い、労働基準法第91条に明確に定められています。

労働基準法第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、
その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、
総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

つまり、職員の生活保障の観点から、減給する上限が定められているのです。

今回のケースで見てみましょう。
以下の状況において、経営者が「1日分を欠勤扱いにするペナルティ」をするとします。

(前提条件)
・給与は月末締めの翌月25日払い
・給与は月額30万円
・5/1~5/31の間に1時間の遅刻を3回した
・1日の所定労働時間は8時間
・1か月の所定労働時間は170時間

上記の条件の場合に各金額を試算してみます。

A:経営者が指示するペナルティの金額
30万円÷170時間×8時間=14,117円

B:法律上の減給金額上限
1回の額:平均賃金(※)の1日分の半額
→1万円×1/2=5,000円
総額:一賃金支払期における賃金の総額の10分の1
→30万円×1/10=3万円

※平均賃金とは、事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、 その期間の総暦日数で除した金額です。今回は分かりやすくするため、1日分を1万円とします。(30万円×3か月÷90日)

上記の場合ですと、【1回の額】において、A>Bとなってしまい、法律に反して減給しすぎているという判断になります。

■一切減給してはいけないの?
たとえ遅刻したとしても、その怠惰な職員に経営者は全額給与を支払わなければならないのでしょうか?
そういうわけではありません。「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。
ことわざでいうところの「働かざる者食うべからず」です。

つまり、不就労(遅刻した時間)分については支払う必要はありません。
今回のケースでは、遅刻した3時間分(5,294円)は賃金カットしても問題ありません。

さらにいうと、(意外かもしれませんが…)
「減給の制裁」の法律上限の範囲内であれば罰金自体は可能です。
今回のケースでいうと、ペナルティの金額に賃金カット分も含まれているので、
8,823円が減給(罰金)に該当しています。(14,117円-5,294円)

この金額が1回の上限額である5,000円の範囲内であれば合法な減給といえるのです。

■ペナルティを設けずに職員の遅刻を減らす方法は?
とはいえ、労使の信頼関係や採用の際の印象のことを考えると、「遅刻で罰金」はあまり得策とは言えません。
そこで活用いただきたいのが「精勤手当」です。
上記の例を精勤手当に置き換えるとこうなります。

「1か月間で、遅刻回数が2回以下の場合精勤手当を支給する」

目的は同じでも、受ける印象がぜんぜん違いますよね。
この手当は法的にも認められている手当で、支給条件も事業所によって自由に定めることができます。現在改善したい課題や目標に合わせて設定してみることをお勧めします

■精勤手当を設ける際の注意点は?
まず、精勤手当の支給条件については就業規則や雇用契約書に明確に定めてください。明確に定めた上で、職員にもわかりやすい形で周知してください。

その際、「遅刻」の定義についても明記するようにしてください。
・遅刻後、その時間について時間単位年休を申し出てきた場合はどうする?
・当日体調不良による遅刻連絡が来た場合はどうする?
・あらかじめ遅刻することを申し出ていた場合はどうする?
等々、色々なケースを想定し、そのすべてに対応できるように、みっちりとルールを築き上げてください。

このあたりの規定が曖昧だと逆に労使間のトラブルにつながってしまいます!
ぜひぜひ、「それならがんばろう!」と職員が奮い立つような素敵なルールを作ってみてください(^^)

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