BLOG ブログ

夜勤手当を支給している場合、深夜割増賃金は別途請求できる?

夜勤手当を支給している場合、深夜割増賃金は別途請求できる?

一般的に、医療機関の人事労務管理は難しいと言われています。一般企業において人事・総務の経験がある人を「事務長」として雇用しても、なかなか現場に馴染めずに、職員や経営者との対立を招くこともよくあります。

それは、本来対等であるべき労使の力関係が、医療現場においては、労>使となることが理由のひとつです。その原因は主に、雇用する職員を、医療現場の近隣に住む、看護師等の有資格者から選ぶ必要があるためです。この2つの条件を満たす母数自体が少ないために、労働者の希少価値が高まり(→権利意識が高まり)、労使の力関係の逆転が起こります。

そのような特殊性をもつ医療機関において、盤石な組織を築くために必要なことは主に以下の2つです。

①明確なルール/管理体制を定めること
②管理者が基礎的な労務管理知識を有すること

そこで、このブログを通じて、医療機関の管理者の方が現場で実際に発生した問題を解決する助けになるような情報を定期的に配信していきます。人事職員の方も参考になることがあると思いますのでご活用ください。

では早速、今回のテーマに入ります。

【夜勤手当を支給している場合、深夜割増賃金は別途請求できるのか?】

多くの医療機関では、看護師や医師に対して、夜勤業務を行った場合に基本給とは別に「夜勤手当」が支給されます。支給された側からすると、この「夜勤手当」が深夜割増賃金(法定割増率2割5分)を指すものか分からず、別途請求されるケース(もしくは質問されるケース)があります。そのような要求・質問に対してどのように回答するべきかを解説します。

結論から言うと、「夜勤手当」の性質によります。2つの性質が考えられます。

  1. 夜勤手当=深夜割増賃金として支給している
  2. 夜勤手当=深夜労働に対しての労いの意味合いで支給している

詳しくみていきます。
■01 夜勤手当=深夜割増賃金として支給している
労働基準法に則り、深夜(22:00~翌5:00)に労働させた場合には、その時間分は割増賃金を支給する必要があります。その割増賃金を実労働時間に基づいて都度計算するのではなく、「夜勤手当」として一括支給しているケースです。

この性質の夜勤手当の場合、手当金額の妥当性を確認する必要があります。実例で見てみます。
(例)所定労働時間が170時間の病院

(Aさん)夜勤手当=4,000円
月給300,000円の看護師の時給:1,765円
深夜業務に7時間従事(22:00~翌5:00)すると、
1,765円×0.25(法定割増率)×7時間=3,094円 <4,000円

→妥当

(Bさん)夜勤手当=4,000円
月給400,000円の看護師の時給:2,353円
深夜業務に7時間従事(22:00~翌5:00)すると、
2,353円×0.25(法定割増率)×7時間=4,123円 >4,000円

→妥当ではない(違法)

このように、一律で夜勤手当を定めていると、各職員の給与の違いから夜勤手当が法定の割増率を満たさない場合もあります。夜勤手当の設定時や職員の給与改定時には要注意です!

■02 夜勤手当=深夜労働に対しての労いの意味合いで支給している
(皆出勤したがらない)日曜日に出勤した職員に対して支給する「日曜出勤手当」がありますが、この夜勤手当についても、同様の意味合いで支給されます。何か根拠に基づいて計算された手当ではなくあくまでも「気持ち」なので、法に則り別途深夜割増賃金を支給する必要があります。

■夜勤手当が上記どちらの性質に該当するかどうかを確認する方法
上記1or2のどちらの性質として支給されているかは、就業規則や給与規定に記載があるはずです。もし記載がない場合は、深夜労働に対しての労いと判断され得るので要注意です。

■まとめ
経営者は割増賃金として支給しているつもりが、職員にはそのことが伝わっておらず、執拗に深夜割増賃金が請求される・・・といったトラブルが起きたら面倒ですし、その対象になる職員が大勢いる場合はなおのこと大変です。そのようなトラブルを起こさないためにも、就業規則や給与規定には「夜勤手当」が何を指すのかを予め明記しておきましょう。そして、夜勤手当が何を指し、どういう計算根拠から設定されているのかも、把握していると心強いです。細かいことかもしれませんが、お金の問題は職員の会社への信頼につながります。きちりとした決まりがあり、そのことを整然と説明できると、職員も安心して働けるはずです。

CONTACT
お問い合わせ

人事オフィス桜井への
ご意見やご要望などは
お気軽に以下のフォームから
お問い合わせくださいませ。