BLOG ブログ

医師専用の就業規則を作るべきか?

医師専用の就業規則を作るべきか?

一般的に、医療機関の人事労務管理は難しいと言われています。一般企業において人事・総務の経験がある人を「事務長」として雇用しても、なかなか現場に馴染めずに、職員や経営者との対立を招くこともよくあります。

それは、本来対等であるべき労使の力関係が、医療現場においては、労>使となることが理由のひとつです。その原因は主に、雇用する職員を、医療現場の近隣に住む、看護師等の有資格者から選ぶ必要があるためです。この2つの条件を満たす母数自体が少ないために、労働者の希少価値が高まり(→権利意識が高まり)、労使の力関係の逆転が起こります。

そのような特殊性をもつ医療機関において、盤石な組織を築くために必要なことは主に以下の2つです。

①明確なルール/管理体制を定めること
②管理者が基礎的な労務管理知識を有すること

そこで、このブログを通じて、医療機関の管理者の方が現場で実際に発生した問題を解決する助けになるような情報を定期的に配信していきます。人事職員の方も参考になることがあると思いますのでご活用ください。

「病院全体の就業規則はあるが、どうしても医師への扱いは異なるときがある。どうしたら良いか?」というご相談をいただくことがあります。

まず、就業規則とは、職員が業務遂行にあたって守るべき規律と、労働条件の具体的細目を定めた規則の総称です。医師を含めその組織で勤務する全職員はこれに従わなくてはならない、絶対的ルールです。

病院は、医師、看護師、看護助手、薬剤師、事務スタッフなど多様な職種の職員により構成されていますが、その中でも、医師は特に勤務等の特殊性がある職種です。

その医師も労働者である以上は就業規則が適用されますが、どうしてもその特殊性から病院全体の就業規則には馴染まないことが多いです。そこで今回の相談、結論から申し上げますと、「医師専用の就業規則を作成すべき」と言えます。その理由や、医師専用の就業規則作成時のポイント等について詳しく解説していきます。

◆医師専用の就業規則を作成すべき理由
就業規則を作り分ける問題は、医療機関に限って発生することではありません。例えば、ある程度の規模以上の一般の会社において、(近年は待遇差をなくしていく動きではありますが)どうしても正社員とパートの運用ルールが異なるという状況は発生します。そういう会社では、「正社員用就業規則」と「パート用就業規則」をそれぞれ作成しています。無理に共通の就業規則を作ることによって運用ルールを一本化する弊害の方が大きいということです。

今回のご相談においても同じことが言えます。働き方改革の影響等により、医師の労務管理も以前に比べると一般化しましたが、やはり患者様を相手にする職業であるため、特別な運用ルールが必要となります。勤務時間や休暇についてなど、労働者の関心が高い事項についても異なることが多いため、院内の他のスタッフと共通の就業規則で管理するのではなく、医師専用の就業規則を作成すべきでしょう。

また、病院によっては、医師以外のスタッフも、「受付等を行う事務スタッフ(専門資格無)」と「看護師等(専門資格有)」の職種に分けて別々の就業規則を作成すべきかもしれません。

◆医師専用就業規則作成時のポイント
医師の相手は患者様です。患者様の不調のタイミングに合わせるため、勤務は、通常勤務に加えて、宿直、日直、休日勤務、救急勤務、オンコール(待機)等の勤務パターンがあります。また、通勤の方法も患者様の状態の緊急度に応じてタクシーや自家用車になることもあるでしょう。

このように、特別な運用ルールが発生するのです。よくある運用ルールの違いを下記に挙げますので、もし作成される場合にはご参考になさってください。()内が医師ならではの運用ルールです。

〇勤務時間(医師は当直やオンコールが発生)
〇給料の設定(医師は年俸制)
〇退職の申し出(一般職員よりも早い申し出が必要)
〇退職金(不支給)
〇休暇(休日とは別に研究日を設定)

◆就業規則の届出時の注意点(意見書について)
事業場に10人以上の職員がいる場合には、就業規則を作成した後に届出する義務があります。その際には「きちんと職員にも意見を聴きました」という証明として、事業場の全労働者の過半数を代表する者の意見を聴取した上で【意見書】という書類を添付する必要があります。意外と思われるかもしれませんが、医師専用の就業規則であっても、わざわざ医師から聴取する必要はなく、病院全体の就業規則届出時に立てた同じ労働者代表からの意見書でOKです。

◆最後に
最近、働き方改革の影響もあり、労務管理についての知識を多少持っている職員が増えてきているように感じます。それは医師も同じです。これまでは「医師なんだから」とか「その分給料たくさん払っているんだから」といえば通用してきたかもしれませんが、現在はそうはいきません。特に、有給休暇等の休みの権利を強く主張してくる医師とのトラブルは非常に多いです。病院の経営に欠かせない優秀な医師を雇入れ、定着させるためにも、医師専用の就業規則を作成して明確な運用ルールを定めておくと良いかもしれません。

CONTACT
お問い合わせ

人事オフィス桜井への
ご意見やご要望などは
お気軽に以下のフォームから
お問い合わせくださいませ。