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2022年、雇用保険料が引き上げられる?

2022年、雇用保険料が引き上げられる?

こんにちは。
櫻井です。

社会人になって最初に驚くのが毎月の給料から天引きされる所得税や社会保険料の額の大きさですよね。なかなか憎たらしい存在です。事業主からしても毎月大きな負担となっています。

最近、その保険料が更に上がるというニュースが巷で話題となっています。お客様から質問をいただく機会も増えているため、今回は、2022年に保険料負担が増えるのかどうかについて、その背景と合わせて解説していきたいと思います。

まず、早速結論ですが、2022年に保険料負担が増える可能性が高いです。

給与明細を見ていただければ分かるかと思いますが、一定の要件を満たす社員は、毎月「雇用保険料」が給与から天引きされています。今回引き上げの対象となるのはその雇用保険料です。
“可能性が高い”と表現したのは、まだ確定はしていないためです。ただし、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」にはっきりと書かれているので、この改正が行われる可能性は高いといえます。

厚労省HP「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」より


雇用保険料率は下記のように変更される予定です。

事業の種類現在令和4年4月~9月令和4年10月~
一般の事業 労働者 3/1000
事業主 6/1000
全体 9/1000
労働者 3/1000
事業主 6.5/1000
全体 9.5/1000
労働者 5/1000
事業主 8.5/1000
全体 13.5/1000
農林水産業及び
清酒製造業
労働者 4/1000
事業主 7/1000
全体 11/1000
労働者 4/1000
事業主 7.5/1000
全体 11.5/1000
労働者 6/1000
事業主 9.5/1000
全体 15.5/1000
建設業 労働者 4/1000
事業主 8/1000
全体 12/1000
労働者 4/1000
事業主 8.5/1000
全体 12.5/1000
労働者 6/1000
事業主 10.5/1000
全体 16.5/1000

実際にいくら負担が増えるのかが気になるところだと思います。実例でみてみましょう。
※今回は労働者の負担額(天引控除額)のみ見ていきます。

■月給30万円の場合
現在:900円/月
令和4年10月~:1,500円/月
■月給50万円の場合
現在:1,500円/月
令和4年10月~:2,500円/月

雇用保険料率は他の保険料に比べると料率が低いため、想像していたよりも上昇幅が小さくご安心された方もいるかもしれませんが、年額に換算するとバカになりません。

ちなみに、国が雇用保険料の引き上げを実施した場合、0.1%の引き上げで保険料収入は年2千億円増えると言われています。それが今回の改正で、労働者と事業主合わせて合計4.5%の引き上げが行われるということは、保険料収入が年9兆円増えることになります。イメージしづらい金額ですが、それだけ国の財政が逼迫している状況だということです。

では、なぜこのような雇用保険料率の引き上げが行われるに至ったのでしょうか?
大きな原因としては、ご想像の通り、新型コロナウイルスによる影響です。ただここでは、新型コロナウイルスによりどのようなことが起こっているのか、言い換えれば、”どのくらいヤバい状況なのか”についてもう少し深堀りしてみたいと思います。

財政逼迫原因①
雇用安定資金の残高がほぼ底をつきた

厚労省HP「雇用保険財政と執行状況」より

雇用安定資金は、雇用調整助成金の支払原資です。

雇用調整助成金とは…コロナ等により休業せざるを得なくなった事業所が、従業員を休ませたがその分の給料を支払ってあげた場合に、その金額の一部(全部)を国が補償する制度

コロナにより認知度の上がったこの雇用調整助成金の支払いが急増しています。2022年2月時点で、その助成額は累計で5兆円を超えています。

東奥HPより

2019年度時点で雇用安定資金の残高は1.5兆円程度でしたが、雇用調整助成金の支給には到底足りず、事実上破綻しました。そこで政府は、臨時的に雇用保険の積立金から雇用安定資金へ資金を投入することを認めて、雇用調整助成金の財源の確保を図りました。

財政逼迫原因②
雇用保険の積立金が底をつきそう

厚労省HP「雇用保険財政と執行状況」より

雇用保険の積立金は、失業保険等の支払原資です。

雇用保険の基本手当(昔でいうところの失業手当)の受給者数は、コロナにより失業者が増えたため増加傾向にあります。基本手当の受給者数が増加することで、基本手当の支払原資である積立金を切り崩して支払っていくことになります。

また、財政逼迫原因①で説明した通り、臨時的にこの積立金を雇用調整助成金の財源である雇用安定資金に貸し出すことが認められたことで、ものすごいスピードで切り崩しが行われています。その結果、グラフのように積立金残高が激減する結果となっています。

以上の原因考察からわかっていただけたかと思いますが、既に国の雇用保険制度におけるお財布はすっからかんです。雇用保険料率をあげて収入を増やさないと立ち行かなくなる状況なのです。

基本手当や休業手当を受け取ったことがない方からすると、なかなか理解・納得するのが難しい引き上げかもしれません。ただ、 東日本大震災のときにも海外で話題になりましたが、日本人には困っているときに互いに助け合う”心”が備わっているはずです(^^)
未曾有の事態の中、同じ時代に生きる仲間として、ここはグッと堪えて支え合えれば何よりです。

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