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始業時間前の労働時間は、残業になるのか?

始業時間前の労働時間は、残業になるのか?

一般的に、医療機関の人事労務管理は難しいと言われています。一般企業において人事・総務の経験がある人を「事務長」として雇用しても、なかなか現場に馴染めずに、職員や経営者との対立を招くこともよくあります。

それは、本来対等であるべき労使の力関係が、医療現場においては、労>使となることが理由のひとつです。その原因は主に、雇用する職員を、医療現場の近隣に住む、看護師等の有資格者から選ぶ必要があるためです。この2つの条件を満たす母数自体が少ないために、労働者の希少価値が高まり(→権利意識が高まり)、労使の力関係の逆転が起こります。

そのような特殊性をもつ医療機関において、盤石な組織を築くために必要なことは主に以下の2つです。

  1. 明確なルール/管理体制を定めること
  2. 管理者が基礎的な労務管理知識を有すること

そこで、このブログを通じて、医療機関の管理者の方が現場で実際に発生した問題を解決する助けになるような情報を定期的に配信していきます。人事職員の方も参考になることがあると思いますのでご活用ください。

では早速、初回のテーマに入ります。

【始業時間前の労働時間は、残業になるのか?】

・通勤ラッシュを避けたい
・朝一で事務処理を完了させてしまいたい
・自分は元々朝方である
といった理由から、本来所定労働時間が9時のところを毎朝7時30分に出勤している職員がいるとします。

結論から言うと、早出出勤(始業時間よりも早く出勤すること)は、そのすべてが労働時間として取り扱われるわけではありません。そのため、早出出勤した時間(7時30分~9時)が残業時間に該当するわけではなく、割増賃金を支給する必要もありません。

解説していきます。

■まず、労働時間の基本的な考え方とは?
労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれて業務を遂行している時間」を指します。したがって、ポイントとなるのは、「その労働時間が使用者の指揮命令下に置かれている時間がどうか」です。

■早出出勤の時間は、労働時間か?
原則的には、就業規則や労働契約で定められている始業時刻(上記例では9時)からが労働時間に該当します。ただし、例えば上司の命令によって早く出勤せざるを得ない場合や、上司から早出出勤しなければならない程の業務量を職員が与えられている場合(黙示の残業命令)などは、その時間は労働時間に該当します。

以上の理由から、上で挙げた例の場合、

・通勤ラッシュを避けたい
・朝一で事務処理を完了させてしまいたい
・自分は元々朝方である

という理由はあくまでも職員本人の希望によるものであるため、早出出勤したとしてもその時間は労働時間には該当しません。たとえ、その職員が毎日早出出勤を1時間30分し、1か月間(出勤日数20日)で30時間もの所定労働時間以外の労働をしていたとしても、その時間について残業代の請求をすることは難しいでしょう。本人がそのことを承知の上、早出出勤していれば良いのですが、後になって「これは労働時間のはずだ!残業代を支給してほしい!」と言ってきたら労務トラブルへと発展します。そのようなことが起こらないようにするためにも、管理者は、自分の管理する職員の出退勤時間を把握することはもちろん、その者の能力と抱えている業務量をできる限り把握し、きちんと”管理”することが大切です。そのことが結果として組織を守り、良い組織に繋がっていきます。

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